フリーランスSES完全ガイド｜個人事業主の年収・契約・エージェント活用から独立準備まで徹底解説｜1on1Freelance

フリーランスSESとして働くことを検討している方へ、本記事では実際の契約形態から年収アップの方法まで、実践的なノウハウを解説します。SES（システムエンジニアリングサービス）として独立を考えているエンジニアの方が抱える「会社員時代と何が変わるのか」「どれくらい稼げるのか」といった疑問に、現場の実態を踏まえてお答えします。

準委任契約の仕組みや個人事業主としての責任、エージェントの活用方法など、フリーランスSESとして成功するために必要な情報を網羅的にまとめました。

本記事を読むことで、独立前の準備から案件獲得、そして長期的なキャリア構築まで、フリーランスSESとして活躍するための具体的な道筋が明確になります。

1.フリーランスSESとは？

フリーランスSESは、個人事業主として企業のシステム開発プロジェクトに参画する働き方です。正社員として雇用されるのではなく、準委任契約を中心とした業務委託契約により、稼働ベースで技術支援を行います。

SES契約の基本構造

フリーランスSESの契約では、クライアント企業のオフィスに常駐して開発業務を担当することが一般的です。契約形態は準委任契約が中心となり、成果物の納品義務はなく、稼働時間に応じた報酬を受け取る仕組みです。

月間稼働時間は140～180時間が標準的で、時間単価はエンジニアの経験年数や技術スキル、担当する業務内容によって決定されます。フリーランスSESとして働く際は、この基本的な契約構造を理解しておくことが重要です。

正社員SESとフリーランスSESの違い

正社員SESとフリーランスSESの最大の違いは収入構造にあります。フリーランスSESは企業の中間マージンがないため、同じプロジェクトでも月収が1.5～2倍になることも珍しくありません。ただし、社会保険料は全額自己負担となり、有給休暇や賞与などの福利厚生はありません。

また、案件終了後の空白期間や収入の不安定さというリスクも自己責任で管理する必要があります。これらのメリット・デメリットを理解した上で、フリーランスSESへの転身を検討することが大切です。

個人事業主としての責任と自由

フリーランスSESは個人事業主として、確定申告や保険加入などの事務手続きを自分で行います。しかし、その分働く時間や案件を自由に選択でき、キャリアを主体的にコントロールできるメリットがあります。複数案件の掛け持ちや、リモートワーク可能な案件の選択など、ライフスタイルに合わせた働き方が実現可能です。

2.フリーランスSESの年収事情

フリーランスSESの年収は、スキルレベルと案件選定によって大きく変動します。業界全体の相場と、収入を最大化するための戦略について詳しく解説します。

経験年数別の単価相場

フリーランスSESの月単価は、経験年数やスキルレベルによって大きく変動します。フリーランスボード調べによると、2025年6月のフリーランス案件・求人一覧の月額単価の平均は74.1万円、年収の目安は889万円となっています。（参考： フリーランスボード ）

実務経験が豊富になるほど単価は上昇し、ジュニアレベルから中堅、シニアレベルへと段階的に報酬が増加していきます。特に需要の高い技術スタック（クラウド、AI/機械学習、セキュリティなど）を持つエンジニアは、市場相場を上回る単価で契約できることもあります。

年収1000万円を実現する条件

年収1000万円を達成するには、月単価85万円以上の案件に1年間参画することで年収1000万円以上が実現可能です。これを実現するためには、単なる実装スキルだけでなく、上流工程の経験や特定分野での専門性が求められます。また、エージェントを通さない直接契約や、複数案件の並行稼働によって収入を増やす方法もあります。

手取り額の計算と税金対策

フリーランスSESの手取り額は、売上から必要経費と各種税金を差し引いた金額となります。税金には所得税・住民税・個人事業税・消費税があり、さらに国民健康保険料や国民年金保険料も自己負担となるため、会社員時代と比較して手取り計算は複雑になります。

節税対策として、青色申告特別控除（最大65万円）の活用、小規模企業共済やiDeCo（個人型確定拠出年金）への加入、経費の適切な計上などが有効です。

フリーランスSESとして収入を最大化するには、単に高単価案件を獲得するだけでなく、税務知識を身につけて計画的な資金管理を行うことが重要です。

3.フリーランスSES契約の種類と注意点

フリーランスSESとして働く際の契約形態には複数の選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。適切な契約形態を選択することが、安定的な収入確保につながります。

準委任契約と請負契約の違い

フリーランスSES契約は、主に準委任契約と請負契約の2種類に分かれます。準委任契約は、業務遂行に対して報酬が支払われる契約形態で、月単価での精算が一般的です。成果物の完成責任がないため、技術的な問題が発生しても損害賠償リスクは限定的です。

一方、請負契約では成果物の完成と納品が義務となり、瑕疵担保責任も発生します。フリーランスSESの現場では準委任契約が9割以上を占めており、安定的な収入確保と低リスクで業務を行える点が特徴です。契約形態の選択は、将来のキャリアパスにも影響するため慎重に検討することが大切です。

契約書で確認すべき重要項目

フリーランスSES契約書では、単価・支払い条件・契約期間・業務範囲・機密保持・損害賠償の6項目を重点的に確認します。単価は消費税の扱いや精算幅（140-180時間など）も含めて明記されているか確認が必要です。

支払いサイクルは月末締め翌月末払いが標準ですが、企業によっては翌々月払いもあるため、資金繰りへの影響を考慮しましょう。契約期間は3ヶ月更新が一般的で、自動更新条項の有無も重要です。また、業務指示系統や勤務場所、リモートワークの可否なども契約書で明確にしておくことで、フリーランスSESとして安心して業務に取り組めます。

なお、2023年10月に開始されたインボイス制度により、SES案件では適格請求書発行事業者かどうかが契約の可否や報酬額に影響するケースがあります。案件参画にあたっては、登録の有無を事前に確認しておくことが重要です。

偽装請負のリスクと対策

フリーランスSESでは偽装請負のリスクに注意が必要です。偽装請負とは、契約上は業務委託でありながら、実態が労働者派遣に該当する状態を指します。

判断基準として、勤務時間の拘束、作業場所の指定、業務指示の直接性、欠勤時の承認要否などがあります。2024年のフリーランス保護新法施行により、発注者側の責任も明確化されました。

フリーランスSESとして身を守るためには、契約時に指揮命令系統を確認し、業務の進め方に裁量権があることを明文化することが重要です。問題がある場合は、エージェントに相談するか、労働局への相談も検討しましょう。

4.フリーランスSESになるための準備と手続き

会社員からフリーランスSESへの転身には、事前の準備が成功の鍵となります。必要な手続きと準備すべき事項を段階的に解説します。

独立前に準備すべきこと

フリーランスSESへの独立を考えている方は、まず6ヶ月分の生活費を貯めておくと安心です。会社員のうちにクレジットカードを作ったり、住宅ローンや賃貸の新規契約審査を済ませておくのがおすすめです。退職後だと審査が通りにくくなることもあります。

技術面では、GitHubに自分のコードを公開したり、技術ブログを始めたりして、スキルをアピールできる準備をしておきましょう。フリーランスエージェントにも早めに登録して、どんな案件があるか、単価相場はどれくらいかをチェックしておくと良いでしょう。複数のエージェントと話をしておけば、独立後スムーズに案件に参画できます。

開業届と青色申告の手続き

フリーランスSESとして独立したら、開業から概ね1ヶ月以内を目安に税務署へ開業届を提出します。青色申告承認申請書は開業日から2ヶ月以内に提出すれば、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。

社会保険の手続きも大切で、退職日の翌日から14日以内に国民健康保険と国民年金への切り替えが必要になります。確定申告に備えて、会計ソフトも早めに導入しておくと安心です。フリーランスSES向けの会計ソフトなら、案件ごとの収支管理も簡単にできます。慣れないうちは税理士に相談するのもおすすめです。

スキルシートの作成方法

フリーランスSESとして案件を獲得するには、魅力的なスキルシートが不可欠です。プロジェクト経験は新しいものから時系列で記載し、使用技術・担当フェーズ・チーム規模・成果を具体的に記述します。

特に数値で表現できる成果（処理速度の改善率、コスト削減額など）は積極的にアピールしましょう。また、保有資格や自己学習の内容も記載することで、継続的な成長意欲を示すことができます。

5.フリーランスSES案件の獲得方法とエージェント選び

安定的な案件獲得は、フリーランスSESの最重要課題です。効率的な案件獲得方法と、エージェントとの上手な付き合い方について解説します。

フリーランスエージェントの選び方

フリーランスSESの案件獲得には、エージェント選びが重要なポイントになります。良いエージェントを見極めるには、保有案件数の多さ、マージン率の透明性、担当者のレスポンスの速さ、支払いサイトの短さ（15日や30日など）、福利厚生の充実度を確認しましょう。

実際は3〜5社のエージェントに登録して、案件の質や対応を比較するのがおすすめです。1on1フリーランスやレバテックフリーランス、Midworksなどは案件数が豊富で魅力的です。一方、特定の技術に特化したエージェントは、高単価のSES案件を持っていることが多いので、自分のスキルに合わせて使い分けることが大切です。

直接契約を獲得する方法

エージェントを介さない直接契約は、マージンがない分高収入が期待できます。獲得方法としては、過去の職場での人脈活用、勉強会やカンファレンスでのネットワーキング、SNSやブログでの情報発信、クラウドソーシングサイトからの実績構築などがあります。ただし、契約交渉や請求業務を自分で行う必要があるため、ある程度の経験を積んでからチャレンジすることをおすすめします。

長期安定案件の見極め方

フリーランスSESで長期安定案件を見つけるには、いくつかの重要なポイントがあります。まず確認したいのは、プロジェクトの規模と予算規模です。大企業の基幹システム開発や金融系の新システム構築など、数年単位で計画されている案件は長期契約になりやすいです。

面談では「プロジェクトの全体スケジュール」「今後の拡張予定」「過去の契約更新実績」を必ず質問しましょう。また、チーム規模が10名以上で、自分の役割が明確に定義されている案件は安定性が高いです。保守運用フェーズに入っているシステムや、段階的なマイグレーション案件も狙い目で、フリーランスSESとして安定収入を確保しやすくなります。

6.フリーランスSESで年収アップする方法とキャリアパス

単なる労働力提供者ではなく、価値あるプロフェッショナルとして成長し続けるための戦略をお伝えします。

市場価値を高める技術選定

フリーランスSESとして市場価値を高めるには、技術トレンドを見極めて需要の高いスキルを習得することが重要です。DXやクラウド化の加速に伴い、ITエンジニアの需要が高まり年収アップに繋がっています。 2025年時点で特に需要が高いのはTypeScript、Python、Ruby、Go言語などのモダンな言語で、高単価案件が多数存在します。 

また、クラウドプラットフォーム（AWS、Azure、GCP）、コンテナ技術（Docker、Kubernetes）、AI/機械学習、セキュリティ分野のスキルも引き続き高い需要があります。ただし、技術力だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメントスキルも重要視されるため、複数のスキルを組み合わせて独自の価値を提供できるフリーランスSESが高単価案件を獲得しやすくなります。

ワークライフバランスの実現方法

フリーランスSESの魅力の一つは、働き方の自由度です。リモートワーク可能な案件を選択する、稼働時間を調整可能な契約を結ぶ、年に数回の長期休暇を計画的に取るなど、会社員時代には難しかった働き方が可能になります。ただし、自己管理能力が求められるため、仕事とプライベートの境界線を明確にし、計画的なスケジュール管理を心がけることが大切です。

将来のキャリアパス

フリーランスSESは将来の選択肢が豊富で、自分の強みを活かした多様なキャリアパスを描けます。技術を深めてアーキテクトやテックリードとして専門性を高める道、PMやITコンサルタントとして上流工程で活躍する道があります。また、複数のエンジニアと協業して法人化し、受託開発会社を設立する選択肢もあります。

最近では、フリーランスSESで培った技術力を活かして、自社プロダクトやSaaSサービスを開発する起業家も増えています。大切なのは、今の案件をこなすだけでなく、3年後、5年後にどうなりたいかを明確にして、必要なスキルや人脈を計画的に構築していくことです。

7.まとめ

フリーランスSESは、エンジニアとしての技術力を最大限に活かして、自由な働き方と収入アップを実現できる働き方です。準委任契約で安定的に案件参画し、しっかりとした契約管理と税務対策を行うことで、会社員時代よりも高い年収を得ることが十分可能です。

フリーランスSESとして成功するには、クラウドやAI/機械学習など市場価値の高い技術を身につけること、複数の優良エージェントと信頼関係を築くこと、そして3年後・5年後を見据えたキャリアプランを持つことが重要です。

本記事で紹介した独立準備、案件獲得方法、契約時の注意点などを参考に、フリーランスSESへの転身を検討してみてください。