Pythonによる開発を効率化するキーワードとして「フレームワーク」がよく挙げられます。なかでもWebアプリケーションや機械学習分野での活用例が多く、スピードと品質の両立に欠かせない存在です。
本記事では、Pythonフレームワークの基本から、代表的な種類と特徴、使わない場合のデメリットや選び方の指針まで網羅的に解説します。
さらに、各フレームワークが持つシェアや利用事例にも触れ、初心者から実務者まで役立つ具体的なポイントを整理しました。読了後には自分に合ったフレームワークを選び、開発を一段と効率化できるようになるはずです。
Pythonフレームワークとは、アプリケーション開発に必要な基本的な仕組みやパーツをあらかじめまとめて提供してくれるソフトウェアです。自作で一からコードを書かなくても、フレームワークの機能を呼び出すだけで共通機能が実現できるため、開発の生産性が格段に向上します。
開発スピードの向上
アプリ開発ではログインやフォーム処理など、多くのプロジェクトで必要とされる機能が存在します。フレームワークを使えば、ログイン処理やフォーム送信など、よく使われる機能をフレームワークがあらかじめ提供してくれるため、一から実装する必要がなくなります。
保守性の確保
フレームワークは一定のコーディング規約やディレクトリ構成を持っており、複数人で開発してもコードが散らばりにくいのが特長です。可読性・保守性が高まり、長期的に運用しやすくなります。
セキュリティ対策
権限管理やCSRF対策など、セキュリティに関する機能も最初から備えているフレームワークが多いです。独自実装のバグや脆弱性が生じにくくなり、より安全に運用できます。
フレームワークを使わずに開発したいとの意見もありますが、以下のようなデメリットが考えられます。
大量のコードを一から記述する必要があり、期間が長引きがち
セキュリティの穴を独自で潰す必要がある
コードやフォルダ構成の統一が難しく、メンテナンス性が低下する。特にWebアプリケーションや大規模システムの開発では、これらのリスクを避けるためにも、フレームワークの活用が一般的です。
Pythonにおけるフレームワークの代表例は、Webアプリケーション開発に活用されるものが多いです。ここでは特に人気の高いものを取り上げます。
Django(ジャンゴ)は、大規模開発にも対応できるフルスタックフレームワークとして有名です。URLルーティング、認証機能、管理画面などが完備されているため、必要な機能の大半はDjango本体だけで実装できます。
自動生成される管理画面
データベースの内容をGUIで確認・編集できる管理画面は、Djangoの象徴的機能です。開発者の負担を軽減しつつ、管理のしやすさを大幅に高めます。
豊富な実績
国外ではInstagramやSpotifyなどの大手Webサービスが現在も採用している実績があり、信頼度が高いです。日本国内でも大小さまざまなプロダクトで活用されています。
機械学習との活用
DjangoはWeb向けフレームワークですが、Django REST Frameworkを組み合わせることで、学習済みモデルを提供するためのAPI構築にも活用できます。
Flask(フラスク)は比較的軽量な「マイクロフレームワーク」です。Djangoほど機能が詰め込まれていない分、カスタマイズ性が高く、小規模から中規模のWebサイトやAPI作成によく用いられています。
必要最低限の機能のみを提供
テンプレートエンジン(Jinja2)とWSGI対応の開発サーバを標準搭載し、Flask 2.0以降はAsync対応も強化。自由度が非常に高いのがポイントです。
シンプルなコード
Webアプリの最小サンプルなら、十数行ほどで作れてしまうほど記述がシンプルです。初心者がWeb開発の流れを学ぶにも適しています。
拡張プラグインが豊富
Flask-WTF(フォーム処理)やFlask-Login(認証)など、コミュニティ製の拡張が数多く存在します。用途に応じて必要な分だけ導入しやすい設計です。
FastAPIは、非同期処理を念頭に置いた高速なAPIサーバ向けフレームワークです。RESTfulなAPI構築に特化しており、利用者は近年急増しています。
高パフォーマンス
非同期I/Oをサポートしているため、少ないリソースで多くのリクエストを捌けます。リアルタイム性が求められるサービスに向いています。
自動ドキュメント生成
OpenAPI(Swagger)仕様に基づき、エンドポイントのドキュメントを自動で生成する仕組みが整備されています。チーム開発や外部公開APIに最適です。
型ヒントの活用
Python 3.6以降の型ヒントを活用し、Pydanticとの連携によりリクエストやレスポンスのバリデーションが自動化されます。エディタサポートも充実し、バグの早期発見につながります。
Bottleは、軽量で高速なWebアプリケーション開発のためのマイクロフレームワークです。アプリケーションを1ファイルで完結できる軽量設計で、導入も手軽です。学習用途やマイクロサービス開発に適しています。
シンプル設計
単一のPythonファイル「bottle.py」で実装されているため、フレームワークの全体像が把握しやすく、依存関係もなく導入が簡単です。プロトタイプやマイクロサービスの開発に最適です。
組み込みサーバと柔軟な展開
開発用の組み込みサーバを備えつつ、標準WSGIに完全準拠しているため、本番環境ではuWSGIやGunicornなどの高性能サーバーとシームレスに連携できます。
シンプルながら機能的
組み込みテンプレートエンジンを搭載しつつ、Jinja2やMakoなどの外部テンプレートエンジンにも対応。プラグインシステムにより機能拡張も可能ですが、大規模アプリケーションにはDjangoやFlaskが選ばれることが多いです。
CherryPyやPyramidなども、国内ではあまり知名度が高くないものの、一定の支持を集めています。海外コミュニティを中心に利用例があり、独自のフレームワークランキングでも上位に入る場合があります。
CherryPy: 最小限のコードでオブジェクト指向HTTP APIが構築できる
Pyramid: 小規模から企業レベルまでスケール可能、最新版は型安全性向上
それぞれ特徴が異なるため、用途やチームの好みに合わせて選ぶとよいでしょう。
Pythonフレームワークのシェアや人気度は調査主体や時期によって異なるため、厳密な数字はわかりません。ただし、Webアプリケーション領域においては、DjangoかFlaskのどちらかを採用している例が多く、FastAPIが急速に台頭している印象があります。
たとえば、2023年のJetBrainsの開発者アンケートでは、Pythonで最もよく使われるWebフレームワークとして、DjangoとFlaskの結果が報告されています。一方で、FastAPIは新興ながらも上位を狙う勢いがあります。
日本国内ではまだDjangoが安定した人気を保ちつつ、Flaskも手軽さから一定数のユーザを獲得しています。機械学習やAI関連のWeb APIを構築する文脈ではFastAPIを選ぶケースも増えており、今後の動向に注目が集まります。
もしフレームワークの人気順を参考にする場合は、企業の求人情報やコミュニティイベントの開催数などを俯瞰して検討するとよいでしょう。
Pythonフレームワークは、Webアプリ開発だけでなく、機械学習やデータ分析分野でも豊富に存在します。機械学習領域では、厳密には「ライブラリ」と呼ばれることが多いですが、本記事では一貫して高機能な開発基盤を広義の「フレームワーク」として紹介します。
一般的にライブラリとの境界は曖昧ですが、Pythonフレームワークの特徴は「高レベル機能を包括的に提供する」点にあります。
初心者から上級者まで、目的に合ったPythonフレームワークを選ぶことで開発効率が大幅に向上します。
TensorFlow
Googleが開発するオープンソースの機械学習プラットフォームです。TensorFlow 2.x系では、Kerasとの統合やEagerモードがデフォルトで有効になったことで、直感的な操作が可能となり、多様な機械学習プロジェクトで活用されています。
PyTorch
Facebook(Meta)が開発に注力しているフレームワークで、動的グラフを扱いやすい点が人気です。研究開発から商用利用まで幅広く使われています。
これらのフレームワークは単独で使用する場合もあれば、Webフレームワークと組み合わせて推論用のAPIを構築することもあります。たとえばFlaskやFastAPIをフロントに据え、バックエンドでPyTorchが学習済みモデルを読み込み、推論結果を返すといった流れです。
用途(研究用・商用・プロトタイプなど)
研究開発ではPyTorchが優勢ですが、近年は商用展開も強化しています。TensorFlowはエッジやモバイル向け最適化で選ばれています。
エコシステムやサポート体制
書籍やコミュニティ、公式ドキュメントの充実度を考慮すると、TensorFlow・PyTorchいずれも多くのリソースが得られます。
フレームワークはいくつも候補があるため、どれを選ぶか迷うかもしれません。以下に指針の例を挙げます。
大規模・包括的な機能が必要
Djangoがおすすめです。ユーザ認証・管理画面・セキュリティなどが標準で充実しているため、巨大なサイトや業務システムでも安定します。
小規模・スピード重視
FlaskやBottleが合うでしょう。最小構成で素早く試作品を作り、その後必要なプラグインを追加していく流れがスムーズです。
高パフォーマンスAPI・非同期処理
FastAPIが有力な候補になります。型安全性も高く、OpenAPI連携により、高速開発と高いパフォーマンスを両立できます。
すでにDjangoに慣れたメンバーが多ければ、あえて別フレームワークに切り替えるリスクは避けるべきかもしれません。逆に「とにかく軽量で自由度の高い仕組みを使いたい」というエンジニアが中心ならFlaskを選ぶなど、チーム内のスキルセットを考慮することが重要です。
プロトタイプを制作したあと、本番運用レベルまで機能を拡張する可能性が高ければ、サードパーティの拡張が多いフレームワークや、コミュニティが盛んなものを選ぶと安心です。DjangoやFlaskのコミュニティは日本語情報も豊富なため、導入障壁が低いと考えられます。
実際にPythonフレームワークを導入する際には、押さえておきたいポイントがいくつかあります。開発をスムーズに進め、後々の運用で困らないように準備を整えましょう。
フレームワークごとに推奨されるディレクトリ構成があるため、公式ドキュメントなどを参考にしつつ、見通しの良い設計を心がけます。特にDjangoの場合は、アプリケーション単位でフォルダを分ける慣習がありますし、Flaskならblueprint機能を使って大規模化に耐える構造を作る方法もあります。
Webフレームワークや機械学習フレームワークを使うと、開発スピードが上がる一方、テストが疎かになるケースもあります。ユニットテストや統合テストの仕組みを構築し、GitHub ActionsやJenkinsなどのCIツールと連携して自動テストを回すことで品質を担保しましょう。
フレームワークの脆弱性が発見された際には、早急にアップデートを行う必要があります。プロジェクト開始時にバージョン管理を行い、リリースノートを定期的にチェックする体制を整えることが大切です。
困ったときは、公式ドキュメントや各種Q&Aサイト(英語圏ではStack Overflow、日本語ならteratailやQiitaなど)が強い味方になります。DjangoやFlaskは特に情報が豊富で、解決策が見つけやすいでしょう。
Pythonフレームワークは、Webアプリケーションや機械学習プロジェクトを効率的かつ安全に進めるための大きな手助けとなります。
代表的なところではDjangoやFlask、FastAPIが人気を集めていますが、他にもBottleやCherryPy、機械学習向けのTensorFlowやPyTorchなど多彩な選択肢が存在します。プロジェクトの規模、チームの経験、将来的な拡張性を見据えながら、最適なフレームワークを選定してみてください。
ぜひ今回の情報を参考に、開発フローやコード品質を高められるフレームワーク活用へと一歩踏み出してみましょう。
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